グリーンカード放棄と税務リスク完全ガイド
グリーンカード放棄は移民手続きだけではありません。出国税、30%源泉徴収、Form 8854の落とし穴を5ステップで解説します。
グリーンカード放棄は「移民手続き」では終わらない
「グリーンカードを返せば、アメリカとの関係は終わり」
多くの方がそう考えがちですが、これは非常に危険な誤解です。実務の現場では、グリーンカード放棄そのものより、その“前後の税務判断”で大きな損失が発生するケースを数多く見てきました。
実際、正しい順序を踏まずに手続きを進めた結果、
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401(k) や IRA から 30%の強制源泉徴収 が発生
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出国税(Exit Tax)が想定以上に確定
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日本やEUなど移住先国での 二重課税・申告漏れ
といった事態に直面する方も少なくありません。
本記事では、グリーンカード放棄を検討している方向けに、**「5つのステップ」と「絶対に避けるべき失敗」**を、日本語で分かりやすく整理します。
この内容が特に重要な方
以下に一つでも当てはまる方は、必ず最後までお読みください。
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グリーンカードを 8年以上 保有している
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401(k)等の退職年金口座、IRA、RSU、ストックオプションを保有
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米国の銀行口座・証券口座を維持している
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日本、EU諸国など 高税率国へ移住予定
これらは、出国税や源泉徴収リスクと密接に関係します。
ステップ1:出国計画(Exit Planning)
グリーンカード放棄は、まず税務戦略から始める必要があります。
多くの方は I-407 の提出を起点に考えますが、実務上は完全に逆です。最初に行うべきは、以下3点の整理です。
1. 米国と移住先国、両国の税務整理
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税務居住者の開始日・終了日
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所得区分(給与、配当、年金、キャピタルゲイン)
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税率差と外国税額控除の可否
税務居住者の開始日は、自分で自由に決められるものではありません。 ここを誤解すると、思わぬ課税が発生します。
2. ファイナンスの整理
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米国資産を残すか、整理するか、残すとしたら外国からコントロールできるのか?
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退職口座の扱い(即時分配 vs 継続保有)
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株式・投資信託・RSUの未確定利益
3. ロジスティクス(実務)
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送金方法・タイミング
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米国不動産の売却時期
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米国金融機関との関係維持
この段階での判断が、後続ステップすべてに影響します。
ステップ2:他国への移住
日本へ移住する場合、多くの方が見落とすのが「日本の課税開始タイミング」です。
日本では、居住実態が発生した時点から、
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海外所得
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海外資産
が課税・申告対象になる可能性があります。
よくある誤解
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「日本に住民票を入れた日から課税」→ 必ずしも正しくありません
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「収入がなければ問題ない」→ 資産取引があれば影響あり
特に、米国退職口座をいつ、どのステータスで受け取るかは、日本税務との関係で慎重な検討が必要です。
ステップ3:I-407(グリーンカード放棄)
I-407 は単なる「カード返却書類」ではありません。
I-407の本質
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税務上の 居住者ステータス切替スイッチ
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出国税や源泉徴収の起点
特に重要なのが 提出日 です。
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いつ提出したか
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どの方法で提出したか
これにより、
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税年度の区分
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デュアルステータスの有無
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その年の課税範囲
が変わります。
「出国した日」と「I-407提出日」は一致しないことも多く、ここで判断を誤ると、税金が大きく変わることがあります。また送付要綱は常に変わっています。最新のUSCISのWebpageを参照してください。
ステップ4:W-8BEN / W-8CE
このステップは、実務で最も事故が多いポイントです。
よくある誤解
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「W-8は任意の書類」→ 誤り
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「銀行だけに出せばいい」→ 誤り
W-8BEN や W-8CE は、以下の機関に影響します。
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銀行
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証券会社
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401(k) 管理機関
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IRA管理会社
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トラスト関連機関
失敗例:30%源泉徴収
I-407 提出後に、W-8BEN を適切に提出しなかった結果、
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401(k) 分配時に 30%の強制源泉徴収
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本来不要だった税金が差し引かれる
というケースが実際に発生しています。
これは「選択ミス」ではなく、手続き順序のミスです。またW-8CEはCovered Expatriateだけが対象になります。提出期限がありますので、気を付けましょう。
ステップ5:最終確定申告
グリーンカード放棄後、最後に行うのが「最終申告」です。
通常、以下の形になります。
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米国:
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デュアルステータス申告
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多くの場合 MFJ(夫婦合算)は不可
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Form 8854 の提出必須
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州税:
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パートイヤー申告が一般的
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出国税が確定する瞬間
多くの方が誤解していますが、
出国税は I-407 では確定しません
最終申告と Form 8854 によって、初めて金額が確定します。
ここまで来ると、後戻りはできません。
なぜ「DIY」は危険なのか
グリーンカード放棄は、
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移民法
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米国税法
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移住先国税法
が同時に絡む、極めて複雑なプロセスです。
インターネット情報や自己判断で進めた結果、
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不可逆な税務ステータス変更
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修正不能な源泉徴収
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高額な追徴・ペナルティ
につながるケースを、私たちは数多く見てきました。
まとめ:I-407を出す前に
グリーンカード放棄を検討している場合、
I-407 を提出する前に、必ず専門家と戦略を立ててください。
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タイミング
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順序
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税務居住者判定
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退職口座・投資資産の扱い
これらを整理することで、
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不要な30%源泉徴収
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想定外の出国税
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二重課税
を回避できる可能性があります。
CHI Border では、グリーンカード放棄に伴う税務・ファイナンスの整理を専門的にサポートしています。ご検討中の方は、I-407 を提出する前にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の状況に対する税務・法律アドバイスではありません。実際の判断にあたっては、必ず資格を有する専門家にご相談ください。