資産が日米両国に分散している場合、自身の居住地で、相続税の負担をどのように軽減できるかについて詳しく解説します。
資産分散とは、個人や企業が持つ資産を異なる地域や投資先に分けて配置することを指します。これにより、特定の市場や地域に依存せず、リスクを分散させることができます。例えば、投資ポートフォリオの一部を日本国内に、もう一部をアメリカに置くことで、どちらか一方の市場が不調でも全体の資産価値を保つことができます。日米二拠点生活と税金対策を考慮することで、より効果的な資産分散が可能になります。
資産分散の基本的な目的は、リスク管理と資産増加の両立です。異なる市場や通貨、投資商品の組み合わせを通じて、予期せぬ経済変動や政治的リスクに対する耐性を高めることが可能です。
しかし、自身の居住地が与える影響を忘れることはできません。このブログではその点に重きを置いて解説します。
いくつかの非常に重要なポイントをここでは理解してもらいたいと思います。
居住地と言いますが、日米の法律で居住地の定義は異なります。残念なことに条約では「居住者」の定義はされていません。米国での居住者は、Domicileと言います。これは所得税上でのResidentとは違う概念です。
米国の居住者と判断される場合は、米国の生涯非課税枠を使うことができますが、非居住者の場合は、使えません。しかし、ここで条約が生きてきます。米国の非居住者として日本に居住されており、米国に資産がある場合は、条約がない場合は少額の控除額を除いて課税されます。しかし、条約があることにより、日本の居住者は米国の生涯非課税枠を案分して使用できます。2025年は、ほぼ$14 millionの枠がありますので、イラストの場合は、米国にある資産は全体の半分ですので、この枠の半分を使用でき、このケースでは米国では無税になります。ただし、日本の居住者ですから、資産全体の$4 millionが日本の非課税枠を除いたあとの金額に課税されます。
逆に米国の居住者の場合は、全額の生涯非課税枠を利用できるため、米国での税金は無税です。同時に日本は、非居住者ですから、日本にある資産のみ、$2millionが課税対象になるのです。ここで注意しないといけないのは、日本の居住者の定義です。相続税や、贈与税のルールのもとでは、10年以上日本を離れていないとまだ日本の居住者です。米国に来たからすぐに日本の非居住者になるとは限らないのです。
イラストをもう一度見てください。日本居住の場合は総資産$4 millionに課税されますが、米国居住の場合は、 $2 million(50%)しか課税されません。
効果的な資産分散を行うためには、税務上で自身の居住地をどう設定するかが、重要であることは理解いただけたと思います。日米の両方の知識が、極論すると、日米のそれぞれの専門家の力が必要なのです。
また自分の資産状況とリスク許容度を理解することが重要です。その上で、日米クロスボーダー生活と税金対策を考慮しながら、両国の経済状況や税制を踏まえた分散投資を行うことが推奨されます。
この点で重要なのは、資産がどこにあるかは一目瞭然のように考えられるかもしれませんが、ここも両国の解釈で違うので注意が必要です。幸いなことに条約ではこの点に関しては明記されていますが、なにせ1954年の条約ですから、カバーされていない資産もたくさんあり、微妙な判断が必要になります。
居住地の判断や、資産分散や相続税対策には、税務や法務の専門知識が必要です。両国のプロフェッショナルの助けを借りることで、最新の税制や市場動向に基づいた最適なアドバイスを受けることができます。
特に、国際的な資産分散を考える場合、両国の法制度や税制に詳しい専門家のサポートは不可欠です。これにより、リスクを最小限に抑えつつ、資産の最大化を図ることができます。米国とアジアの退職者カップルの税務戦略は、このような国際的な資産管理の一例を提供しています。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、具体的な投資や税務に関するアドバイスを提供するものではありません。個別の状況に応じた専門的なアドバイスが必要な場合は、必ず専門家にご相談ください。
本記事の内容は執筆時点での情報に基づいており、今後の法改正や市場動向により変更される可能性があります。
また当社は法的アドバイスを提供している法律事務所でもありません。税務アドバイスを提供するコンサルティングファームであることをお忘れなく。