海外に住んでいる日本人や、アメリカで働いた経験がある人、または海外に資産や会社を持っている人の中には、アメリカの税務署(IRS)へ「海外関連の情報書類」を提出しなければならない場合があります。しかし、これらの書類は種類が多く、専門的で、とてもわかりにくいものが多いのが現実です。
「知らないうちに提出が必要だった…」
「気づいたら何年も遅れていた…」
そんな人のために用意されている制度が、今回紹介する “Delinquent International Information Returns Submission Procedures(DIIRSP)” です。
本記事では、専門用語をできるだけ使わず、一般の方でも理解しやすいように、この制度の内容をやさしく説明します。
1. DIIRSP とはどんな制度?やさしく説明
DIIRSP は、日本語にすると 「遅れてしまった海外関連情報申告書の提出手続き」 という意味になります。
アメリカでは、海外に資産がある人や海外企業と関係がある人に対して、税金の申告とは別に以下のような「情報だけを報告するための書類」が求められます。
これらは「税金を増やすための書類」ではなく、海外の状況をIRSに知らせるための報告書です。
ただし、提出が遅れると かなり高額のペナルティ(罰金) が発生することがあります。例えば、Form 5471ですと、意図的に提出していなかった場合のペナルティは年間1万ドルで、連続した未提出は最高で6万ドルです。
そこで、正当な理由がある場合に限って、「遅れてもペナルティなし」で提出できるようにしたのが DIIRSP です。
つまり、
“知らなくて遅れただけで、悪意はない”
という状況の人が救済される仕組みといえます。
2. DIIRSP を使うと何が良いの?
一番のメリットは、
ペナルティ(罰金)を避けられる可能性が高いこと
です。
海外関連の情報書類は、提出し忘れると 前述したように一年で1万ドル のペナルティが課されることもあるため、家計に大きな影響を与える可能性があります。
DIIRSP を使うことで、必要な書類をまとめて提出し、
などを説明すれば、ペナルティが免除になることが多い制度になっています。
3. DIIRSP を使える人の条件は?
DIIRSP は、誰でも自由に使える制度ではありません。
利用するためには、次のような条件があります。
✔ IRS(アメリカ税務署)から調査されていないこと
もしすでにIRSから「あなたの申告はおかしい」と指摘されている場合は、この制度を使えません。
✔ 遅れた理由が“故意”ではないこと
「わざと提出しなかった」「知っていたのに無視した」という場合は対象になりません。この「故意」という概念がくせ者で、現在はかなり幅広く、客観的に事実を調べられることを忘れないでください。
✔ 未提出の書類によって追加の税金が発生しないこと
DIIRSP は “情報書類だけの遅れ” を対象にしています。
もし税金の不足もある場合は、別の制度(Streamlined Filing Compliance Procedures)を使う必要があります。
4. 実際の手続きはどんな流れ?
多くの場合、手続きは次のような流れになります。
① 遅れていた書類を作成する
何年分もある場合はまとめて作成します。専門家のサポートが役に立つ部分です。
② 遅れた理由を説明するカバーレターを書く
難しい言葉を使う必要はありませんが、
「知らなかった」「必要性を勘違いしていた」「最近指摘されて気づいた」
など、理由を正直に説明します。
③ 書類と一緒にIRSに提出する
提出後、IRS が内容を確認し、問題がなければペナルティは課されません。
5. DIIRSP を利用すべきケース
以下のような人に向いています。
-
海外の会社の株式を持っている
-
海外関連の投資や口座がある
-
海外から一定金額以上の贈与・相続をもらった
-
海外の家族や親族から資金が動いた
-
海外トラストに個人的にかかわっている
特に、海外関連の書類は日本では馴染みがなく、提出義務に気づかない人が非常に多いため、DIIRSP は広く利用されている制度です。
6. まとめ:知らなくても大きな罰金につながることがあるので注意
海外に資産を持つ人やアメリカと関係がある人には、意外と多くの報告義務があります。
しかし、内容は専門的で、一般の人がすぐに理解するのは難しいものばかりです。
DIIRSP は、知らずに遅れてしまった人を救うための制度です。
ただし、条件や注意点もあるため、迷った場合は専門家に相談するのが安全です。
【免責事項(Disclaimer)】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務アドバイスや法律アドバイスではありません。個々の状況により適切な対応は異なるため、正確な判断が必要な場合は、米国税務に詳しい専門家(CPA など)へ相談することをおすすめします。
本記事によって生じたいかなる損害についても責任を負いかねます。