海外口座を保有する米国納税者にとって、毎年必ず話題になるのが FBAR(外国銀行・金融口座報告) の提出義務と、その違反時に科される 厳格なペナルティ です。
「知らなかっただけなのに、Willful(故意)と認定されるの?」
「Non-willfulとWillfulの境界はどこにあるの?」
こうした疑問を持つ人は少なくありません。本記事では、最近の判例やIRSの解釈にも触れながら、Willfulness がどのように判断されるのか、そして どんな行為が“口座隠し”とみなされやすいのか をわかりやすく説明します。
FBAR の違反には、大きく2つのカテゴリーがあります。
1年あたり最大 $10,000
申告義務を知らなかった、または単純な過失で提出を失念した場合などがこれに該当します。IRSがこの罰金を積極的に課そうとしているとは、あまり考えられません。実例も少ないと思います。
最大 $100,000 または口座残高の50%(いずれか高い方)
同じFBAR違反でも、故意と判断された途端にペナルティが 10倍以上 に跳ね上がります。
そのため、Willfulness の判断基準が非常に重要になります。往々にして、この罰金は、最高残高の半分程度になるケースが多いように見受けます。例えば違反をした年で年末の最高残高が100万ドルの場合は、罰金が50万ドル程度になります。
こちらはIRSは積極的に違反を探し、罰金を取ろうとしています。この記事では言及しませんが、刑事(Criminal)事件としても扱うケースもあります。
かつては「本当に知らなかったならNon-willfulで済む」と思われがちでした。
しかし近年の判例は “無謀な無視(Reckless Disregard)” と “故意の盲目(Willful Blindness)” を Willfulness と同等に扱っています。
明らかに FBAR 義務を知り得た状況 にあった
提出していないことに 重大なリスク があったのを気づいていた
それにもかかわらず 確認を怠った
「知ろうとしない努力」をした場合
あえて勉強しない、調べない、聞かない
口座関連書類を無視、破棄、放置する
つまり、知らないふりをした時点で Willful とみなされる可能性が高くなる ということです。特にSchedule BにNoと答えておいて、報告しないといけない海外口座があった場合は、IRSのマニュアルでは、この行為がWillful Blindnessに当たるとされています。
FBAR裁判でしばしば取り上げられる典型的な隠蔽行為を一覧にまとめました。
名義を隠すために口座番号だけで管理される口座。
銀行に「米国へ明細を送らないで」と指示する。
書類提供を拒む、あえて黙っている。
海外口座があると知りながら虚偽回答。
追跡を難しくするための行為として扱われやすい。
FATCA対策をよけていると判断される。
実質的所有者の隠蔽目的と認定されやすい。
「口座の存在を意図的に隠していた」と推認される典型例。
これらに該当すると、IRSだけでなく裁判所も 高度な意図的隠蔽行為 と見なす傾向が強いため、Willfulness で認定されるリスクが非常に高くなります。
結論として、裁判所は 「意図的に法律義務を無視したかどうか」 を中心に判断します。
単純ミス → Non-willful
重大な無視 → Willful
意図的な隠蔽 → ほぼ確実に Willful
FBAR問題は、事実関係の違いによって結果が大きく変わるため、早めの相談が最も効果的な防御 となります。また隠ぺい行為を絶対にしないようにすることが、Willfulの認定を避ける一番の方法と考えられます。
海外口座の申告は、米国税法の中でも最も厳しく、誤解も多い分野です。
FBAR違反を指摘された方、海外財産の申告が不安な方は、早めに専門家へ相談することで、不要なペナルティを避けられる可能性が高まります。
CHI Borderでは、海外資産・米国税務に特化したプロフェッショナルが最新の判例とIRS実務に基づきサポートいたします。
本ブログ記事は一般的な教育目的のために提供されているものであり、税務・法律その他いかなる専門的アドバイスも構成しません。ここで説明されている情報は最新の法改正や判例を反映していない可能性があり、特定の財務的・法的判断の根拠として使用すべきではありません。内容の正確性や完全性について当社は一切の保証を行いません。具体的な状況については、必ず資格を有する税理士・弁護士・その他専門家にご相談ください。**